みなづき嵐

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蚊帳のなかに蚊が二三疋にさんびきゐるらしき此寂しさを告げやらましを 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中八首目。

寝床を覆う蚊帳、蚊を防ぐためのものなのだが、二、三匹の蚊が入 ...

みなづき嵐

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ながながと廊下を来つついそがしき心湧きたりわれの心に 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中七首目。

長い廊下を長い時間をかけて歩いて来た。「ながながと」という副詞は、 ...

みなづき嵐

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狂じや一人ひとり蚊帳よりいでてまぼしげに覆盆子いちご食べたしといひにけらずや 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中六首目。

「狂者きょうじゃ」とは、狂人のこと(『字通 ...

みなづき嵐

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狂院の煉瓦の角かどを見ゐしかばみなづきの嵐ふきゆきにけり 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中五首目。

狂院という語は、茂吉が他の歌でも使用しているが、用例として岡本 ...

みなづき嵐

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みなづきの嵐のなかに顫ふるひつつ散るぬば玉の黒き花みゆ 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中四首目。

水無月みなづき(旧暦六月)の嵐という大きく動きのある景の中に何や ...

みなづき嵐

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わがいのち芝居しばゐに似ると云はれたり云ひたるをとこ肥りゐるかも 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中三首目。

主体の命、すなわち人生が芝居に似ていると言われた。精神 ...

みなづき嵐

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わが体にうつうつと汗にじみゐて今みな月の嵐ふきたれ 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中二首目。

「体たい」と言って、身体を客体化している。そこに汗が滲んでいる。「う ...

みなづき嵐

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どんよりと空は曇りて居をりたれば二たび空を見ざりけるかも 『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中一首目。十四首目の後に「(六月作)」とある。

「どんよりと空は曇っている ...

麦奴

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殺人未遂被告某の精神状態鑑定を命ぜられて某監獄に通ひ居たる時、折にふれて詠みすてたるものなり。 『赤光』初版「麦奴」詞書

『赤光』初版「麦奴」十六首の後の詞書。

「殺人未遂被告某」は、五首目で「女をんな刺しし男」、六 ...

麦奴

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黴毒のひそみ流るる血液を彼の男より採りて持ちたり 『赤光』初版「麦奴」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十六首目。この歌の後に「(七月作)」と記載されている。

黴毒(梅毒)とは、病原菌トレポネマ‐ ...