悲報来

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詞書

七月三十日信濃上諏訪に滞在し、一湯浴びて寝ようと湯壺に浸つてゐた時、左千夫先生死んだといふ電報を受取つた。予は直ちに高木なる島木赤彦宅へ走る。夜は十二時を過ぎてゐた。

『赤光』初版「大正二年(七月

悲報来

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あかあかと朝焼けにけりひんがしの山並の天あめ朝焼けにけり 『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」の最終、第十首。

第二句まではア段音とカ行音の響きがまぎれもない明るさを如実に表している。しか ...

悲報来

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諏訪のうみに遠白とほじろく立つ流波ながれなみつばらつばらに見んと思へや  『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第九首。島木赤彦宅から見える諏訪湖。遠くに白くというのを「遠白く」、流れるように起 ...

悲報来

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罌粟けしはたの向うに湖うみの光りたる信濃のくにに目ざめけるかも  『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第八首。

  島木赤彦宅から「罌粟はた」つまりケ ...

悲報来

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赤彦と赤彦が妻吾(あ)に寝よと蚤とり粉を呉れにけらずや 『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第七首。

   島木赤彦宅での一場面。作品主体は主人の赤彦に師・伊藤左千夫の悲報を伝えた ...

悲報来

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死にせれば人は居ぬかなと歎かひて眠り薬をのみて寝んとす 『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第六首。

死ねば人という存在はなくなるという自明のことを思い、嘆く作品主体。「死にせれば ...

悲報来

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氷きるをとこのロのたばこの火赤かりければ見て走りたり  『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第五首。前の一首と同様、採氷している人々を見ている。たばこを吸っていたのは、一人だろうか。 ...

悲報来

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氷室より氷をいだす幾人はわが走る時ものを云はざりしかも  『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第四首。イ段音の頭韻が特徴的だ。「氷室」の「ひ」、「いだす」の「い」、「幾人」の「い」、「云はざり ...

悲報来

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すべなきか蛍をころす手のひらに光つぶれてせんすべはなし   『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第三首。「光」と「蛍をころす」は第ニ首の反復。

この一首で「すべなきか」と ...

悲報来

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ほのぼのとおのれ光りてながれたる蛍を殺すわが道くらし 『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第二首。

  「おのれ」には「自分自身で」、「ひとりでに」という意味が ...