『赤光』初版「屋上の石」⑥ No.00018

屋根の上に尻尾動かす鳥来りしばらく居つつ去りにけるかも  『赤光』初版「屋上の石」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第六首。

  先の第五首で「屋上」としたところを掲出歌では、「屋根の上」としている。比較的ゆったりとした表現となるが、そこに「尻尾動かす鳥」という曖昧な具象が出てくる。種類が明示されないことで影のような存在になっているが、「動かす」と「来り」に動きが見られる。

  第四句「しばらく居つつ」で大きな動きはなくなるが、結句「去りにけるかも」で飛んで行ってしまう。「つつ」は、単純な接続「…て。」で接続助詞「て」と同じ用法であろう(『学研全訳古語辞典』)。「しばらく」がどれくらいの時間かはわからない。また、作品主体がその鳥が飛び去った瞬間を見ていたかもわからない。「けるかも」は詠嘆の意味(「けるかも」の用例)。

  先の第五首の「石」、「冷たし」とは正反対に、「動かす」、「来り」「去り」という動詞の多用により掲出歌には躍動がある。しかし、「去る」という結句からはもの寂しさが読み取れる。続く第七首、第八首では哀愁の情が明示されており、その感情へのつながりも踏まえたい。

https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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