『赤光』初版「七月二十三日」④ No.00024

2021-05-17

十日なまけけふ来て見れば受持の狂人きやうじんひとり死に行きて居し  『赤光』初版「七月二十三日」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」五首中の第四首。

  「十日なまけ」た夏休みが終わった。休み明けに病院へ来た。作品主体は当時、東京府巣鴨病院で働いていた。

  「受持の狂人ひとり」(担当の精神病患者1名)が亡くなっていたというのだ。「死に行きて居し」は、過去の助動詞「き」の連体形終止となっている。余情を出すための手法だが、自分が仕事を休んでいた間に、患者は苦しみ悶えていたという事実を突きつけられた。医師としての無念が表れている。

  ここで第二首を読み返すと、担当患者の現状など知るよしもない作品主体のさまが「十日まり汗をながしてなまけてゐたり」に表れている。前の第三首と、続く第五首には、ともに鳳仙花が詠み込まれるが、担当患者の死を知る前後で鳳仙花の見え方も違っただろう。

https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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