『赤光』初版「麦奴」② No.00027
雨空に煙上りて久しかりこれやこの日の午時ちかみかも 『赤光』初版「麦奴」
『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中二首目。
雨が降る空にずっと煙が上っている。煙は、次の三首目で「けむり」とルビが振ってある。
「久しかり」という終止形は存在しない。正しくは「久し」である。短歌俳句で慣用的に用いられている「カリ終止」である(大野秋田「文法外の文法と俳句の文語(前編)」)。カリ活用が本活用化することによって生まれたものである。
「これやこの」は、「これがあの」という意味だが、ここでは音調を合わせる目的で用いられていると思われる。「午時」は、昼の十二時ごろ。「ちかみ」は、「ちかし」の語幹と接尾語「み」で原因・理由を表す。「かも」は、詠嘆。すなわち、下句は「これこそ、今日の正午が近いからだなあ」という意味になる。
三首目で「飯かしぐ煙」という予想がされており、昼ごはんの支度に伴う煙と見たとわかる。また、「鉛筆の秀を研ぎて居て」とあるから作品主体は屋内にいて、屋外に煙が見えているのだろう。
https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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