『赤光』初版「麦奴」④No.00029

病監の窓の下びに紫陽花あぢさゐが咲き、折をり風は吹き行きにけり  『赤光』初版「麦奴」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中四首目。

  読点までを一息に読みたい。「病監」は、監獄で、病気の囚人を収容する監房。「下び」の接尾語「び」は、名詞に付いて、そのまわり、ほとりの意を表す。病監の外の景である。

  「折をり」は、「たびたび」「ときどき」という意味。「にけり」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形と詠嘆の助動詞「けり」の終止形。ときどき風は紫陽花の咲いているところを吹いていくことよ、というのだ。

  一首目に「監獄のあかき煉瓦」、次の五首目に「ひた赤し煉瓦の塀」とあり、紫陽花の周りの壁は赤いレンガであることが予想される。紫陽花の色にもよるが、色の力が前面に出た景である。しかし、掲出歌では、色彩に関する語は「紫陽花」のみで、風の動きに焦点を合わせている。夏の雨天の風である。

https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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