『赤光』初版「麦奴」⑨No.00034
相群れてべにがら色の囚人は往きにけるかも入り日赤けば 『赤光』初版「麦奴」
『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中九首目。
「べにがら色」は「ベンガラ」という黄味を帯びた赤色顔料を塗料・染料などとした色。囚人の服の色だろう。「相群れて」いるから、複数人で群れている。遠目には、べにがら色の群れである。
四句切れで、詠嘆「けるかも」で切れる。「往」くのだから、作品主体から遠ざかって行くのである。だんだんと単なるべにがら色の塊に見えてくる。「赤け」の「け」は上代のク活用形容詞の已然形活用語尾である(『学研全訳古語辞典』)。これを順接の確定条件の意味で取れば、「夕陽が赤いので」となるが、何の理由なのだろうか。べにがら色と夕陽の色は、赤という点で共通はしている。囚人たちが夕陽に向かっているのか、夕陽を背にしているのかで視覚映像に違いが出てくる。
十三首目には「紺いろの囚人の群」とある。未決囚の着物は青(浅葱色)、既決囚の着物は赤(赭色)と決められていたようである(『びーかん日記』「「赤い人」は赤なのか茶なのか!」2010年3月3日、http://biikan.blog120.fc2.com/blog-entry-129.html?sp)。そのため、掲出歌では既決囚(有罪の判決が確定し、刑の執行を受けている囚人)が詠まれており、十三首目では未決囚(勾留状で拘禁された被疑者・被告人)が詠まれているということだ。
https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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