『赤光』初版「麦奴」⑩No.00035

まはりみち畑にのぼればくろぐろと麦奴むぎのくろみは棄てられにけり  『赤光』初版「麦奴」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十首目。

目的地は畑。回り道を上っていく。黒々とした色が目に入る。

その黒いものとは、「麦奴むぎのくろみ」。一連の標題となっている。麦の黒実とも書くが、黒穂菌くろぼきんのために花や穂が黒くなった麦の穂のことで、夏の季語。黒穂菌は、麦などに寄生して黒穂病くろぼびょうを起こさせる。黒穂病は、大麦、小麦などの穂に、黒穂菌が付着、侵入して黒色の粉(黒穂胞子)を生じる病気(『精選版 日本国語大辞典』)。であるから、「麦奴」は捨てられる運命にある。

植物詠としては四首目の「紫陽花」以来。掲出歌以降は、十三首目に草が出てくる。

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