『赤光』初版「みなづき嵐」Ⅵ No.00048

狂じや一人ひとり蚊帳よりいでてまぼしげに覆盆子いちご食べたしといひにけらずや    『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中六首目。

狂者きょうじゃ」とは、狂人のこと(『字通』)。つまり、精神に異常をきたした人(『デジタル大辞泉』)。精神異常者一名が蚊帳から出てきて、まぶしそうにしている。

そうして、「いちご、食べたい」と言ったではないか。作中主体はそれを目にして詠嘆している。

「狂人」は、十三首目と十四首目に詠まれている。掲出歌の「狂じや」と同一人物かはわからない。また、「蚊帳」は八首目にも詠まれている。