『赤光』初版「みなづき嵐」Ⅶ No.00049

ながながと廊下を来つついそがしき心湧きたりわれの心に    『赤光』初版「みなづき嵐」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中七首目。

長い廊下を長い時間をかけて歩いて来た。「ながながと」という副詞は、「来つつ」に掛かるが、「廊下」の修飾にもなっている。廊下は、「狂院」すなわち精神病院のものだろう。

忙しい心が湧いてきた。倒置法で結句に「われの心に」が来ている。しかし、よく見ると「私の心に忙しい心が湧く」という不思議な表現になっている。

作中主体の「心」を詠んだ歌は、九首目にも見える。