『赤光』初版「麦奴」⑧No.00033

ほほけたる囚人の眼のやや光り女を云ふかも刺しし女を  『赤光』初版「麦奴」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中八首目。

    第一句の「ほほく」は、「蓬く」ならば「髪の毛などが、ほつれ乱れる。けば立って乱れる。」という意味だ。似た言葉に「ほうく」(惚く)がある。これは「ぼける。ぼんやりする。」という意味だ。いずれも現代語では、「ほうける」となり、「耄」・「呆」の字も当てられる。外見のことか、内面(知覚)のことか、いずれにしても整った状態ではないということだ。すると「ほほけたる」は囚人にかかる修飾語だとわかる。その囚人の眼がやや光っている。

  「女を云ふ」は、女のことを話すということだ。「かも」は詠嘆の終助詞。五首目にあった通り、この囚人は「をんな刺しし男」である。であるから女を説明しようとすれば「刺しし女」となる。より具体的で、血なまぐさいイメージを提示し、「女を」の反復となっている。

  十一首目、十二首目には「瞳」が詠み込まれている。掲出歌では「囚人の眼」が光っているが、十一首目では、「囚人のひとみ」はおそらく作品主体により光で照らされる。十二首目は、男が「ひとみを落す」ので光は失われている。

https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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