『赤光』初版「麦奴」ⅩⅣ No.00039

監獄に通ひ来しより幾日いくひ経しかなかな啼きたり二つ啼きたり  『赤光』初版「麦奴」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十四首目。

「殺人未遂被告某の精神状態鑑定を命ぜられて」監獄に通って来ている作品主体。来始めてから数日経った。

かなかなとは、昆虫の日暮ひぐらしの異名。はねの端まで全長四~五センチメートル。体は赤褐色または栗色で、緑と黒の斑紋がある。はねは透明。早朝・夕方および曇天時に「カナカナ」と高い金属音をたてて鳴く。丘陵地の林間に多い。(『精選版 日本国語大辞典』)その鳴き声の聞こえ方から、二匹いることがわかったのだろう。「啼きたり」の反復が二匹鳴いていることに重なる。

掲出歌は、一連中で唯一動物(昆虫)が詠まれている。また、作品主体と囚人の声以外で、唯一言葉により明示された聴覚情報でもある。

https://twitter.com/takahashi_ry5?s=09

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