『赤光』初版「悲報来」⑨ No.00010

諏訪のうみに遠白とほじろく立つ流波ながれなみつばらつばらに見んと思へや  『赤光』「悲報来」

『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第九首。島木赤彦宅から見える諏訪湖。遠くに白くというのを「遠白く」、流れるように起きる波を「流波」と独自に言った。海波のような水面の隆起というより、湖の低く穏やかな波を表した。

「つばらつばらに」は「つらつらと、折に触れて何度も」の意。「見んと思へや」は「見ようと思うがいいよ」という命令形・呼びかけ。

上の句で自然をありのままに詠み、下の句で自らへの呼びかけのような形で心慰めてくれる湖の景色を褒める。次の連作最後の歌でも、さらに自然詠が続く。